恋ひ死なば誰が名は立たじ世の中の
常なきものと言ひはなすとも
- 歌の意味
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私が恋い焦がれて死んだならば、ほかの誰の浮き名が立とうか、あなたの名が立つだろう。世の中は無常なものだから、と言いつくろったとしても。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 603
詞書「題しらず」
もし自分が恋い死にしたら、世間ではほかならぬあなたのせいだと噂が立つだろう、たとえ人の死は世の無常のためだと言いつくろっても、と相手に訴える歌である。恋い死にという誇張をもって、相手の冷淡さを責め、評判を気にさせて心を動かそうとする、駆け引きの趣をもつ一首である。
作者の「ふかやふ」は清原深養父である。平安時代前期から中期の歌人で、清原元輔の祖父、清少納言の曽祖父にあたる。内匠允などを務め、琴の名手としても知られる。
初句「恋ひ死なば」 「恋ひ死ぬ」は恋い焦がれて死ぬ意で、「な」は未然形、「ば」は仮定条件である。
二句「誰が名は立たじ」 「名」は評判、特に浮き名のことである。「じ」は打消推量で、ほかの誰の名が立とうか、ほかならぬあなたの名が立つだろうの意となる。ここで句切れとなる。
三句「世の中の」 人の世、世間を言う。
四句「常なきものと」 「常なし」は無常である意で、人の死は世の無常によるものだと、の意となる。
結句「言ひはなすとも」 「言ひはなす」は言いつくろう、言い立てる意で、「とも」は逆接の仮定条件である。二句と倒置の関係にある。本巻の第五百六十八首が恋のために死にそうな命を詠んだのと同じく、恋い死にを取り上げるが、こちらは相手の評判に訴える点で趣向が異なる。
こひしぬ:恋い焦がれて死ぬ
な:評判、うわさ
いひはなす:言いつくろう、言い立てる
- 作者
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清原深養父
- 出典
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古今和歌集
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月影にわが身をかふるものならば つれなき人もあはれとや見む
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津の国の難波の葦のめもはるに 繁きわが恋人知るらめや