手もふれで月日経にける白真弓
おきふし夜はいこそ寝られね
- 歌の意味
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手も触れずに月日がたってしまった白木の弓を置いたり伏せたりしておくように、起きては臥して、夜は眠ることもできない。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 605
詞書「題しらず」
手も触れないまま月日が過ぎた白木の弓を置いたり伏せたりしておくように、自分も起きたり臥したりして、夜は眠ることもできないと詠む歌である。上の句の弓の景を序詞とし、「おきふし」に弓を「置き伏し」する意と、人が「起き臥し」する意とを掛けている。手も触れない弓には、まだ契りを結べない相手が重ねられており、逢えないまま月日を重ねる恋の苦しさが表されている。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。平安時代前期の歌人で、紀望行の子。古今和歌集の撰者の中心となり、仮名序を記した。土佐守を務め、土佐日記の作者としても知られる。三十六歌仙の一人である。
初句「手もふれで」 「で」は打消の接続助詞で、手も触れないでの意である。まだ契りを結んでいない相手を暗示する。
二句「月日経にける」 「に」は完了、「ける」は過去の助動詞「けり」の連体形で、月日がたってしまったの意である。
三句「白真弓」 「白真弓」は檀(まゆみ)の木で作った白木の弓である。初句からここまでが序詞となり、弓を置き伏しすることから四句の「おきふし」を導く。
四句「おきふし夜は」 「おきふし」は、弓を「置き伏し」する意と、人が「起き臥し」する意とを掛けた掛詞である。
結句「いこそ寝られね」 「い」は眠ることを表す名詞で、弓の縁語の「射」を響かせる。係助詞「こそ」を受けて已然形「ね」で結ぶ係り結びで、眠ることができないと強調する。前歌の第六百四首と同じく、上の句の景を序詞として掛詞で心情へ転じる構成をとる。
しらまゆみ:檀の木で作った白木の弓
おきふし:弓を「置き伏し」する意と、人が「起き臥し」する意を掛ける
い:眠ること。弓の縁語の「射」を響かせる
- 作者
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紀貫之
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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津の国の難波の葦のめもはるに 繁きわが恋人知るらめや
- 次の歌
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人知れぬ思ひのみこそわびしけれ わが嘆きをば我のみぞ知る