人知れぬ思ひのみこそわびしけれ
わが嘆きをば我のみぞ知る
- 歌の意味
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人に知られない恋の思いほどつらいものはない。私の嘆きは、私だけが知っている。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 606
詞書「題しらず」
人に知られない恋の思いほどつらいものはなく、自分の嘆きは自分だけが知っていると詠む歌である。比喩や景物を用いず、心情を率直に言い切ることで、誰にも打ち明けられない忍ぶ恋の孤独を強く表している。本巻における貫之の三首を結ぶ歌である。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。平安時代前期の歌人で、紀望行の子。古今和歌集の撰者の中心となり、仮名序を記した。土佐守を務め、土佐日記の作者としても知られる。三十六歌仙の一人である。
初句「人知れぬ」 人に知られないの意で、二句の「思ひ」を修飾する。本巻の第五百六十五首の「人に知られぬ」と同じく、秘めた恋を言う。
二句「思ひのみこそ」 「のみ」は限定で、人知れぬ思いこそがの意となる。係助詞「こそ」は三句の「けれ」と係り結びをなす。
三句「わびしけれ」 「わびし」はつらい、やるせない意で、「けれ」は「こそ」の結びの已然形である。ここで句切れとなる。
四句「わが嘆きをば」 「嘆き」は恋の悲しみ、嘆息である。「をば」は目的を強調する。八音の字余りの句である。
結句「我のみぞ知る」 係助詞「ぞ」を受けて連体形「知る」で結ぶ係り結びである。二句の「思ひのみ」と結句の「我のみ」とで「のみ」を重ね、孤独をいっそう際立たせている。
わびし:つらい、やるせない
- 作者
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紀貫之
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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手もふれで月日経にける白真弓 おきふし夜はいこそ寝られね
- 次の歌
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言に出でて言はぬばかりぞ水無瀬川 下に通ひて恋しきものを