言に出でて言はぬばかりぞ水無瀬川
下に通ひて恋しきものを
- 歌の意味
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言葉に出して言わないだけなのだ。水無瀬川が表に水はなくとも地下を水が流れているように、心の底では思いが通い続けて、恋しく思っているのに。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 607
詞書「題しらず」
恋心を言葉に出して言わないだけで、表には水がなくても地下を水が流れる水無瀬川のように、心の底では思いが通い続け、恋しく思っているのにと詠む歌である。言葉に表さない恋を、伏流する川の姿にたとえており、外に見えない恋の深さを訴えている。
作者の「とものり」は紀友則である。平安時代前期の歌人で、紀有友の子、紀貫之の従兄弟にあたる。大内記などを務め、古今和歌集の撰者の一人に任じられたが、完成を見ずに没した。三十六歌仙の一人である。
初句「言に出でて」 言葉に出しての意である。本文は「事」と表記する。
二句「言はぬばかりぞ」 「ばかり」は限定で、言わないだけだの意となる。係助詞「ぞ」で強調し、ここで句切れとなる。
三句「水無瀬川」 「水無瀬川」は、表面には水がなく、砂の下を水が流れる川のことで、摂津国の歌枕ともされる。四句の「下に通ひて」を導き、表に表れない恋のたとえとなる。
四句「下に通ひて」 「下」は地下と心の内とを重ねる。本巻の第五百八十一首の「下に流るれ」、第五百九十一首の「下に流れて」と同じく、表に出ない恋を水の流れにたとえる趣向が巻中で繰り返される。
結句「恋しきものを」 「ものを」は逆接の意をこめた詠嘆の終助詞で、恋しく思っているのにと訴えて結ぶ。
みなせがは:表面に水がなく、砂の下を水が流れる川。摂津国の歌枕ともされる
- 作者
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紀友則
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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人知れぬ思ひのみこそわびしけれ わが嘆きをば我のみぞ知る
- 次の歌
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君をのみ思ひ寝に寝し夢なれば わが心から見つるなりけり