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梓弓引けば本末わが方に
よるこそまされ恋の心は

歌の意味
梓弓を引くと本も末も自分の方へ寄ってくるように、夜になるといっそうつのることだ、恋の心は。
鑑賞
巻第十二 恋歌二 610

詞書「題しらず」
 梓弓を引くと弓の両端が自分の方へ寄ってくるように、夜になるとなおいっそう恋心がつのると詠む歌である。上の句の弓を引く動作を序詞とし、「よる」に「寄る」と「夜」とを掛けて、夜ごとに高まる恋心を表している。結句を倒置して「恋の心は」と置き、主題を最後に示す構成に工夫がある。
 作者の「はるみちのつらき」は春道列樹である。平安時代前期の歌人で、春道新名の子。文章生から大宰大典などを務め、壱岐守に任じられたが、赴任前に没した。小倉百人一首にも歌が採られている。

 初句「梓弓」 「梓弓」は梓の木で作った弓で、「引く」「張る」「射る」などにかかる枕詞としても用いられる。ここでは弓そのものを詠む。
 二句「引けば本末」 「本末」は弓の下端と上端のことである。弓を引くと両端がしなって手元に寄ってくることを言う。
 三句「わが方に」 自分の方へ、の意である。初句からここまでが序詞となり、弓の両端が寄ることから四句の「よる」を導く。
 四句「よるこそまされ」 「よる」は、弓の両端が「寄る」意と、「夜」とを掛けた掛詞である。係助詞「こそ」を受けて已然形「まされ」で結ぶ係り結びで、ここで句切れとなる。本巻の第五百五十九首も「寄る」から「夜」を導いており、同じ技巧が巻中で呼応する。
 結句「恋の心は」 倒置によって主語を最後に置き、夜ごとにつのるのは恋の心であると示して結ぶ。

あづさゆみ:梓の木で作った弓。「引く」「張る」などにかかる枕詞としても用いる
もとすゑ:弓の下端と上端
よる:弓の両端が「寄る」意と、「夜」を掛ける
作者
春道列樹
出典
古今和歌集
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命にもまさりて惜しくあるものは 見果てぬ夢の覚むるなりけり
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わが恋は行方も知らず果てもなし 逢ふを限りと思ふばかりぞ