つれづれのながめにまさる涙川
袖のみ濡れて逢ふよしもなし
- 歌の意味
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することもなく物思いにふけっていると、長雨で水かさが増すように涙の川が増していく。袖ばかりが濡れて、あなたに逢う手立てもない。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌三 617
詞書「業平の朝臣の家に侍りける女のもとによみてつかはしける」
長雨で川の水かさが増すように、恋の物思いで涙があふれ、袖が濡れるばかりで逢う手立てがないと嘆く歌である。詞書によれば、業平の家にいた女に贈った求愛の歌である。長雨と物思いを掛けた「ながめ」から「涙川」「濡れて」と水の縁語を連ね、恋の苦しさを誇張して伝えている。
作者の「としゆきの朝臣」は藤原敏行である。藤原富士麻呂の長男で、母は紀名虎の娘である。蔵人頭、右兵衛督などを務め、三十六歌仙の一人で、能書家としても知られる。
この贈答は『伊勢物語』第百七段にも見え、女に代わって業平が返歌を詠んでいる。前歌の業平の「ながめ暮らしつ」と同じく長雨の「ながめ」を用い、巻頭から物思いの雨が続く配列となっている。
初句「つれづれの」は、することもなく心が晴れない様子を表し、次の「ながめ」にかかる。
二句「ながめにまさる」は、長雨と眺め(物思い)を掛けた掛詞で、長雨で水かさが増すことと、物思いが募ることを重ねる。前歌の結句と同じ語を受ける。
三句「涙川」は、涙が川のように流れることのたとえで、「まさる」「濡れ」と縁語をなす。
四句「袖のみ濡れて」は、副助詞「のみ」で、袖が濡れるばかりで、ほかに何も得られないことを強調する。
結句「逢ふよしもなし」は、逢う手段もないと言い切り、恋の行き詰まりを示す。
ながむ:長雨の意と、物思いにふけって眺める意を掛ける
よし:手段、方法
- 作者
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藤原敏行
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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起きもせず寝もせで夜を明かしては 春のものとてながめ暮らしつ
- 次の歌
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浅みこそ袖はひつらめ涙川 身さへ流ると聞かば頼まむ