浅みこそ袖はひつらめ涙川
身さへ流ると聞かば頼まむ
- 歌の意味
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浅いからこそ袖が濡れる程度なのだろう、その涙の川は。体までも流されてしまうと聞いたなら、あなたの心を頼りにしよう。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌三 618
詞書「かの女にかはりて返しによめる」
前歌の敏行の求愛に対し、女に代わって業平が詠んだ返歌である。袖が濡れる程度の涙川はまだ浅い、身まで流れるほどだと聞いたら信じようと、相手の誠意を試すように切り返している。相手の「涙川」を受けて深さ浅さに言い換える機知が見どころである。
作者の「なりひらの朝臣」は在原業平である。阿保親王の五男で、六歌仙、三十六歌仙の一人である。
『伊勢物語』第百七段では、この返歌に感じ入った男が、女を大切にしたと語られている。
初句「浅みこそ」は、浅いので、の意で、接尾語「み」が理由を示す。係助詞「こそ」は四句ではなく二句の「らめ」で結ぶ係り結びである。
二句「袖はひつらめ」は、袖が濡れるのだろう、の意で、推量「らむ」の已然形「らめ」が「こそ」の結びとなり、二句切れとなる。
三句「涙川」は、前歌の三句をそのまま受けた語で、贈歌の言葉を用いて返す贈答の作法である。
四句「身さへ流ると」は、袖だけでなく体まで流されるほどに、の意で、副助詞「さへ」が添加を表す。
結句「聞かば頼まむ」は、仮定の「ば」と意志の「む」で、そう聞いたら頼みにしようと条件を付けて結ぶ。
ひつ:水に濡れる、浸る
たのむ:あてにする、信頼する
- 作者
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在原業平
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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つれづれのながめにまさる涙川 袖のみ濡れて逢ふよしもなし
- 次の歌
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寄るべなみ身をこそ遠く隔てつれ 心は君が影となりにき