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いたづらに行きては来ぬるものゆゑに
見まくほしさにいざなはれつつ

歌の意味
行っても逢えずに無駄に帰ってくるばかりだというのに、逢いたい気持ちに誘われて、何度も出かけてしまう。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 620

詞書「題しらず」
 行っても逢えずに帰ってくるだけだとわかっていながら、逢いたい一心に誘われて何度も通ってしまうと詠む歌である。報われないとわかっていても抑えきれない恋心を、自分をいざなう「見まくほしさ」という心の働きとして客観的に捉えている。
 作者は「よみ人しらず」とあり、名は伝わっていない。

 初句「いたづらに」は、無駄に、むなしく、の意である。
 二句「行きては来ぬる」は、行っては帰ってくる、の意で、完了「ぬ」の連体形「ぬる」で下に続く。
 三句「ものゆゑに」は、逆接の接続助詞で、〜なのに、の意を表す。
 四句「見まくほしさに」は、逢いたいという気持ちのために、の意で、「見まくほし」は、見ることが望ましい、の意の連語である。
 結句「いざなはれつつ」は、受身「る」と反復の「つつ」で、逢いたい気持ちに誘われて繰り返し出かけることを示す。「つつ」止めで余韻を残す。

いざなふ:誘う
作者
よみ人しらず
出典
古今和歌集
前の歌
寄るべなみ身をこそ遠く隔てつれ 心は君が影となりにき
次の歌
逢はぬ夜のふる白雪と積もりなば 我さへともに消ぬべきものを