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逢はぬ夜のふる白雪と積もりなば
我さへともに消ぬべきものを

歌の意味
逢えない夜が、降る白雪のように積もり重なっていったなら、雪が消えるように、私までも一緒に消えてしまうに違いないのに。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 621

詞書「題しらず」
 逢えない夜が雪のように積もっていけば、自分も雪とともに消えてしまうだろうと詠む歌である。逢えない夜が重なることを雪が積もることにたとえ、雪が消える姿に恋に死ぬ身を重ねている。
 作者は「よみ人しらず」とあり、名は伝わっていない。左注に「この歌は、ある人のいはく、柿本人麿が歌なり」とあり、柿本人麻呂の作とする説がある。

 初句「逢はぬ夜の」は、逢えない夜が、の意で、打消「ず」の連体形「ぬ」が夜を修飾する。
 二句「ふる白雪と」は、降ると経るを掛けた掛詞で、夜が過ぎていくことと雪が降ることを重ねる。
 三句「積もりなば」は、完了「ぬ」の未然形に仮定の「ば」が付き、積もってしまったならば、と仮定する。「積もる」「消ぬ」は雪の縁語である。
 四句「我さへともに」は、雪だけでなく自分までも一緒に、の意で、「さへ」が添加を示す。
 結句「消ぬべきものを」は、消えてしまうに違いないのに、の意で、終助詞的な「ものを」で詠嘆を込めて結ぶ。

ふる:雪が降る意と、時が経る意を掛ける
く:消える
作者
よみ人しらず
出典
古今和歌集
前の歌
いたづらに行きては来ぬるものゆゑに 見まくほしさにいざなはれつつ
次の歌
秋の野に笹分けし朝の袖よりも 逢はで来し夜ぞひちまさりける