みちのくにありといふなる名取川
なき名取りては苦しかりけり
- 歌の意味
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陸奥にあるという名取川の名のように、身に覚えのない噂を取ってしまうのは、つらいことであった。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌三 628
詞書「題しらず」
陸奥の名取川の名を借りて、身に覚えのない浮き名を立てられるつらさを詠む歌である。上の句は名取川を示して「名取り」を導く序詞で、遠い歌枕を用いて、自分では防ぎようのない噂を嘆いている。
作者の「ただみね」は壬生忠岑である。『古今和歌集』の撰者の一人で、三十六歌仙の一人である。
「なき名」を詠む歌が次の三首にも続き、本歌はその歌群の最初に置かれている。本巻の第六百五十首も名取川を詠み、こちらは埋もれ木が現れるように恋が知られることを恐れている。
初句「みちのくに」は、陸奥の国に、の意で、遠い東国の地を示す。
二句「ありといふなる」は、あるという、の意で、伝聞の「なり」の連体形「なる」が、話に聞くだけの土地であることを表す。
三句「名取川」は、陸奥の歌枕である。ここまでが「名取り」を導く序詞となる。
四句「なき名取りては」は、無実の噂を受けては、の意で、名取川の「名取」を同音で受ける。
結句「苦しかりけり」は、詠嘆の「けり」で、苦しいことだと気付いた思いを込めて結ぶ。
なきな:根拠のない噂、無実の浮き名
みちのく:陸奥の国、今の東北地方
- 作者
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壬生忠岑
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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かねてより風に先立つ波なれや 逢ふことなきにまだきたつらむ
- 次の歌
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あやなくてまだきなき名のたつた川 渡らでやまむものならなくに