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人はいさ我はなき名の惜しければ
昔も今も知らずとを言はむ

歌の意味
あの人はどうだか知らないが、私は根も葉もない噂が立つのが惜しいので、昔も今も、あの人のことは知らないと言おう。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 630

詞書「題しらず」
 相手がどう思うかはわからないが、自分は無実の噂が立つのが惜しいので、昔も今もあの人とは関係がないと言い通そうと詠む歌である。噂を避けるために関係を否定しようとする心の中に、かえって断ち切れない思いがにじんでいる。
 作者の「もとかた」は在原元方である。在原棟梁の子で、在原業平の孫にあたる。

 初句「人はいさ」は、相手はさあどうだか、の意で、副詞「いさ」が下の「知らず」を省いた形で、相手の心がわからないことを示す。
 二句「我はなき名の」は、初句の「人は」と対になり、自分の側では、と話題を転じる。
 三句「惜しければ」は、惜しいので、の意で、噂によって名が傷つくのを惜しむ理由を示す。
 四句「昔も今も」は、以前も現在も、の意で、関係をすっかり否定する言い方である。
 結句「知らずとを言はむ」は、知らないと言おう、の意で、間投助詞「を」で強め、意志の「む」で結ぶ。

なきな:根拠のない噂、無実の浮き名
作者
在原元方
出典
古今和歌集
前の歌
あやなくてまだきなき名のたつた川 渡らでやまむものならなくに
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