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懲りずまにまたもなき名は立ちぬべし
人憎からぬ世にし住まへば

歌の意味
懲りもせず、またしても根も葉もない噂が立ってしまうだろう。人を憎からず思ってしまう、この世に住んでいるのだから。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 631

詞書「題しらず」
 人を嫌いになれない性分でこの世に生きている以上、懲りずにまた噂が立つだろうと詠む歌である。噂に苦しんだことがありながら、恋をやめられない自分を半ばあきらめて見つめる、軽い自嘲の響きがある。
 作者は「よみ人しらず」とあり、名は伝わっていない。
 第六百二十八首から続く「なき名」の歌群を締めくくる一首で、次歌からは人目を忍んで通う恋の歌へと移る。

 初句「懲りずまに」は、懲りもせずに、の意である。
 二句「またもなき名は」は、またしても根拠のない噂が、の意で、以前にも噂に苦しんだことを示す。
 三句「立ちぬべし」は、きっと立ってしまうだろう、の意で、完了「ぬ」と推量「べし」が確信を表す。三句切れである。
 四句「人憎からぬ」は、人を憎く思わない、つまり人に心を寄せてしまう、の意である。
 結句「世にし住まへば」は、この世に住み続けているので、の意で、強意の副助詞「し」と継続の「ふ」を用い、三句までの理由を倒置の形で示す。

こりずま:懲りもせず
なきな:根拠のない噂、無実の浮き名
作者
よみ人しらず
出典
古今和歌集
前の歌
人はいさ我はなき名の惜しければ 昔も今も知らずとを言はむ
次の歌
人知れぬ我が通ひ路の関守は 宵々ごとにうちも寝ななむ