古典和歌stream

寝ぬる夜の夢をはかなみまどろめば
いやはかなにもなりまさるかな

歌の意味
共寝をした昨夜の逢瀬が夢のようにはかなかったので、その夢の続きを見ようとうとうとすると、いっそうはかない思いがつのることだ。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 644

詞書「人に逢ひて朝によみてつかはしける」
 逢瀬の夜が夢のようにはかなかったので、もう一度夢で逢おうとまどろむと、かえってはかなさがつのると詠む歌である。詞書によれば、女と逢った翌朝に詠んで贈った後朝の歌である。「はかな」を繰り返し、逢瀬そのものが夢のように感じられる心の揺らぎを表している。
 作者の「なりひらの朝臣」は在原業平である。阿保親王の五男で、六歌仙、三十六歌仙の一人である。
 この歌は『伊勢物語』第百三段にも見える。本歌から、夢とうつつの境を詠む歌が続く配列である。

 初句「寝ぬる夜の」は、共寝をした夜の、の意で、完了「ぬ」の連体形「ぬる」を用いる。
 二句「夢をはかなみ」は、夢がはかないので、の意で、形容詞の語幹に接尾語「み」が付いて理由を示す。
 三句「まどろめば」は、うとうととすると、の意で、夢の続きを見ようとする気持ちを表す。
 四句「いやはかなにも」は、いっそうはかなく、の意で、二句の「はかな」を重ねて強める。
 結句「なりまさるかな」は、ますますそうなることだ、の意で、詠嘆の終助詞「かな」で結ぶ。

まどろむ:うとうとと眠る
作者
在原業平
出典
古今和歌集
前の歌
今朝はしもおきけむ方も知らざりつ 思ひ出づるぞ消えて悲しき
次の歌
君や来し我や行きけむ思ほえず 夢かうつつか寝てか覚めてか