名取川瀬々のむもれ木あらはれば
いかにせむとかあひ見そめけむ
- 歌の意味
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名取川の瀬々に沈んでいる埋もれ木が水面に現れるように、二人の仲が人に知られてしまったら、どうしようと思って逢い始めたのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌三 650
詞書「題しらず」
名取川の川底に埋もれた木が現れるように、秘めた恋が人に知られたらどうするつもりで逢い始めたのだろうと詠む歌である。名取川の「名取」に評判を取る意を響かせ、上の句の川の景で下の句の恋の不安を導いている。
作者は「よみ人しらず」とあり、名は伝わっていない。
本巻の第六百二十八首も名取川を詠み、無実の噂を嘆いているが、本歌は実際の恋が現れることを恐れる点で異なる。
なお本文の二句は「むもれ木」とあり、読み仮名の行の「うもれき」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。
初句「名取川」は、陸奥の歌枕で、「名取」に評判が立つ意を響かせる。
二句「瀬々のむもれ木」は、あちこちの瀬に沈んでいる埋もれ木、の意で、人に知られず秘めた恋のたとえである。
三句「あらはれば」は、現れたならば、の意で、埋もれ木が水面に出ることと、恋が知られることを重ねる。
四句「いかにせむとか」は、どうしようと思って、の意で、係助詞「か」が疑問を示し、結句で結ぶ。
結句「あひ見そめけむ」は、逢い始めたのだろうか、の意で、過去推量「けむ」の連体形で「か」を結ぶ係り結びである。
むもれぎ:長く水中や土中に埋もれて固くなった木
あひみそむ:男女が初めて逢う、契りを結び始める
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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君が名も我が名も立てじ難波なる みつとも言ふなあひきとも言はじ
- 次の歌
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吉野川水の心は早くとも 滝の音には立てじとぞ思ふ