思ふどちひとりひとりが恋ひ死なば
誰によそへて藤衣着む
- 歌の意味
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思い合う二人のうち、どちらか一人が恋に死んだなら、残された方は、誰の死にかこつけて喪服を着ればよいのだろう。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌三 654
詞書「橘清樹が忍びにあひ知れりける女のもとよりおこせたりける」
思い合う二人のうち一方が恋に焦がれて死んだら、残された方は、忍ぶ仲ゆえに表立って喪に服することもできず、誰の死にかこつけて喪服を着ればよいのかと詠む歌である。詞書によれば、橘清樹がひそかに通じていた女のもとから贈ってきた歌である。秘密の恋であるがゆえの悲しみを、死と喪服という極端な想定で表している。
作者は「よみ人しらず」とあり、名は伝わっていない。詞書から、橘清樹と忍ぶ仲にあった女性の歌である。
次歌の清樹の返歌と一対をなす贈答である。
初句「思ふどち」は、思い合う者同士、の意である。
二句「ひとりひとりが」は、二人のうちどちらか一人が、の意である。
三句「恋ひ死なば」は、恋に焦がれて死んだならば、の意で、仮定の条件を示す。
四句「誰によそへて」は、誰のせいにかこつけて、の意で、忍ぶ仲では本当の理由を明かせないことを示す。
結句「藤衣着む」は、喪服を着ようか、の意で、推量「む」で結ぶ。四句の「誰」と呼応して疑問となる。
どち:仲間、同士
よそふ:かこつける、関係づける
ふぢごろも:藤などの繊維で織った粗末な衣、喪服
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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花すすきほに出でて恋ひば名を惜しみ 下結ふ紐の結ぼほれつつ
- 次の歌
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泣き恋ふる涙に袖のそほちなば 脱ぎかへがてら夜こそは着め