泣き恋ふる涙に袖のそほちなば
脱ぎかへがてら夜こそは着め
- 歌の意味
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泣きながら恋い慕う涙で袖がぐっしょり濡れたなら、着替えるついでに、人目のない夜にこそ喪服を着よう。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌三 655
詞書「返し」
前歌の女の問いに対する橘清樹の返歌である。あなたを恋い慕って泣く涙で袖が濡れたなら、それを着替えるついでに、人目のない夜にこそ喪服を着ようと答えている。人に知られずに喪に服する方法を示すことで、秘めた恋を最後まで守る覚悟を伝えている。
作者の「たちばなのきよき」は橘清樹である。平安時代前期の官人であるが、経歴の詳細は多く伝わらない。
初句「泣き恋ふる」は、泣きながら恋い慕う、の意である。
二句「涙に袖の」は、涙で袖が、の意である。
三句「そほちなば」は、ぐっしょり濡れたならば、の意で、完了「ぬ」の未然形に「ば」が付いた仮定である。
四句「脱ぎかへがてら」は、濡れた衣を着替えるついでに、の意で、接尾語「がてら」を用いる。
結句「夜こそは着め」は、夜にこそ着よう、の意で、係助詞「こそ」を意志「む」の已然形「め」で結ぶ係り結びである。前歌の結句「藤衣着む」を受ける。
そほつ:ぐっしょりと濡れる
がてら:〜のついでに
- 作者
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橘清樹
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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思ふどちひとりひとりが恋ひ死なば 誰によそへて藤衣着む
- 次の歌
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うつつにはさもこそあらめ夢にさへ 人目をよくと見るがわびしさ