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思へども人目つつみの高ければ
川と見ながらえこそ渡らね

歌の意味
恋しく思っているけれど、人目をはばかる慎みが、川の堤のように高いので、渡れる川だと見ていながら、どうしても渡ることができない。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 659

詞書「題しらず」
 恋しく思っても、人目を気にする気持ちが高い堤のように立ちはだかり、目の前の川を渡れないように逢いに行けないと詠む歌である。「つつみ」に堤と慎みを掛け、川を渡ることを恋の成就にたとえている。
 作者は「よみ人しらず」とあり、名は伝わっていない。
 次歌も「人目つつみ」の句を用いて、同じ趣向を急流の比喩で詠んでおり、二首が対をなしている。

 初句「思へども」は、恋しく思っているけれど、の意で、逆接で下へ続く。
 二句「人目つつみの」は、堤と慎みを掛けた掛詞で、人目をはばかる慎みと、川の堤を重ねる。次歌の四句と同じ語句である。
 三句「高ければ」は、高いので、の意で、理由を示す。
 四句「川と見ながら」は、渡れる川だと見ていながら、の意である。「堤」「川」「渡る」は縁語である。
 結句「えこそ渡らね」は、渡ることができない、の意で、副詞「え」と打消が呼応し、係助詞「こそ」を打消「ず」の已然形「ね」で結ぶ係り結びである。

つつみ:川の堤の意と、人目をはばかる慎みを掛ける
作者
よみ人しらず
出典
古今和歌集
前の歌
夢路には足も休めず通へども うつつに一目見しことはあらず
次の歌
たぎつ瀬の早き心を何しかも 人目つつみのせきとどむらむ