紅の色には出でじ隠れ沼の
下に通ひて恋ひは死ぬとも
- 歌の意味
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紅の色のように、はっきりと表には出すまい。隠れ沼の水が下を通うように、心の内で思いを通わせて、恋い死にしようとも。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌三 661
詞書「寛平御時后の宮の歌合の歌」
紅の色のように恋心を表に出すことはしない、隠れ沼の水が底を流れるように心の内でひそかに思い続け、たとえ恋い死にしてもと詠む歌である。詞書によれば、宇多天皇の寛平年間に、母の班子女王の御所で催された歌合の歌である。鮮やかな紅と、人目につかない隠れ沼とを対比させ、忍ぶ恋の決意を表している。
作者の「きのとものり」は紀友則である。紀有朋の子で、紀貫之の従兄にあたる。『古今和歌集』の撰者の一人であったが、完成前に没したとされる。三十六歌仙の一人である。
ここから、恋心を色に出すまいとする忍ぶ恋の歌が続く配列である。
初句「紅の」は、紅花で染めた鮮やかな赤色のことで、目立つ色として「色に出づ」を導く。
二句「色には出でじ」は、表には出すまい、の意で、打消意志の「じ」で言い切る二句切れである。
三句「隠れ沼の」は、草などに覆われて人目につかない沼のことで、「下」を導く。
四句「下に通ひて」は、水が下を通うことと、心の内でひそかに思いを通わせることを重ねる。
結句「恋ひは死ぬとも」は、恋い死にしようとも、の意で、逆接仮定の「とも」で結び、二句の決意を倒置の形で強める。
かくれぬ:草などに覆われて外から見えない沼
いろにいづ:思いが顔色や態度に表れる
- 作者
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紀友則
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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たぎつ瀬の早き心を何しかも 人目つつみのせきとどむらむ
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冬の池に住むにほ鳥のつれもなく そこに通ふと人に知らすな