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下にのみ恋ふれば苦し玉の緒の
絶えて乱れむ人なとがめそ

歌の意味
心の内でばかり恋い慕っていると苦しい。玉を貫いた紐が切れて玉が散り乱れるように、私が耐えきれずに思い乱れても、人よ、咎めないでくれ。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 667

詞書「題しらず」
 心の内に秘めてばかりの恋は苦しいので、玉の緒が切れて玉が散り乱れるように、こらえきれず取り乱しても咎めないでくれと詠む歌である。忍ぶ恋を続けてきた者が、ついに耐えきれなくなる心の限界を、玉の緒の比喩で表している。
 作者の「とものり」は紀友則である。紀有朋の子で、紀貫之の従兄にあたる。『古今和歌集』の撰者の一人で、三十六歌仙の一人である。
 第六百六十一首で「色には出でじ」と誓った友則が、本歌では忍びきれない苦しさを詠み、次歌では色に出てしまうだろうと詠んでいる。忍ぶ恋が限界に達し、恋が人に知られていく歌群への転換点となる配列である。

 初句「下にのみ」は、心の内にばかり、の意で、副助詞「のみ」が限定を示す。
 二句「恋ふれば苦し」は、恋い慕っていると苦しい、の意で、二句切れである。
 三句「玉の緒の」は、玉を貫き通す紐のことで、「絶え」「乱れ」を導く。
 四句「絶えて乱れむ」は、紐が切れて玉が散り乱れることと、耐えきれずに心が乱れることを重ねる。「緒」「絶え」「乱れ」は縁語である。
 結句「人なとがめそ」は、人よ咎めないでくれ、の意で、「な〜そ」の形で禁止を表す。

たまのを:玉を貫き通す紐、命の意にも用いる
とがむ:非難する、問いただす
作者
紀友則
出典
古今和歌集
前の歌
白川の知らずとも言はじ底清み 流れて世々にすまむと思へば
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我が恋を忍びかねてはあしひきの 山橘の色に出でぬべし