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石上布留の中道なかなかに
見ずは恋しと思はましやは

歌の意味
石上の布留の中道の「なか」ではないが、なまじっか逢ったりしなかったなら、これほど恋しいと思っただろうか、いや思わなかっただろう。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 679

詞書「題しらず」
 なまじ逢ったために恋しさに苦しむことを、反語によって強く言い切った歌である。上二句は「中道」の「なか」の音を重ねて「なかなかに」を導く序詞で、大和の古い地名を用いた調子のよさが特徴である。
 前歌の「逢ひ見ずは恋しきこともなからまし」と同じ趣向を、「見ずは恋しと思はましやは」と反語の形で受けており、二首は対をなして並べられている。
 作者の「つらゆき」は紀貫之である。紀望行の子で、古今和歌集の撰者の一人として仮名序を執筆し、土佐守を務めたのちに「土佐日記」を著した。

 初句「石上」は、大和国の地名で、同じ地域の「布留」にかかる枕詞である。
 二句「布留の中道」は、布留(現在の奈良県天理市付近)を通る道をいい、「なか」の音から三句の「なかなかに」を導く序詞をなしている。
 三句「なかなかに」は、なまじっか、かえっての意で、逢ったことがかえって苦しみのもとになったという思いを表す。
 四句「見ずは恋しと」の「見ずは」は、逢わなかったならの意の仮定条件で、前歌の初句「逢ひ見ずは」と対応する。
 結句「思はましやは」は、反実仮想の「まし」に反語の「やは」が付き、思っただろうか、いや思わなかっただろうの意となる。

なかみち:ある土地の中を通る道
作者
紀貫之
出典
古今和歌集
前の歌
逢ひ見ずは恋しきこともなからまし 音にぞ人を聞くべかりける
次の歌
君てへば見まれ見ずまれ富士の嶺の めづらしげなく燃ゆる我が恋