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飛鳥川淵は瀬になる世なりとも
思ひ初めてむ人は忘れじ

歌の意味
飛鳥川の深い淵が浅い瀬に変わるように、移り変わりの激しい世の中であっても、ひとたび思いはじめた人のことは忘れまい。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 687

詞書「題しらず」
 淵と瀬が入れ替わる飛鳥川のように移ろいやすい世の中であっても、一度思いを寄せた人は決して忘れまいと誓う歌である。無常の象徴である飛鳥川を持ち出し、それと対比して変わらぬ心を強調している。
 飛鳥川の淵瀬の変化は、巻第十八の第九百三十三首「世の中はなにか常なる飛鳥川昨日の淵ぞ今日は瀬になる」で知られる発想である。本巻でも第七百二十首の「あすかの河」、第七百二十二首の「ふち」「あさきせ」と、川の淵と瀬が心の深浅を表す趣向が繰り返される。

 初句「飛鳥川」は、大和国飛鳥を流れる川で、流れが変わりやすいことから世の無常の象徴として詠まれた歌枕である。
 二句「淵は瀬になる」は、深い淵が浅い瀬に変わるの意で、世の移り変わりを表す。
 三句「世なりとも」は、そのような世であってもの意で、逆接の仮定条件を示す。
 四句「思ひ初めてむ」は、ひとたび思いを寄せたの意で、心に深く思いはじめたことを示している。
 結句「人は忘れじ」は、その人は忘れまいの意で、打消意志の「じ」で強い誓いを表す。

ふち:川の水が深くよどんでいる所
せ:川の浅く流れの速い所
おもひそむ:思いはじめる
作者
よみ人しらず
出典
古今和歌集
前の歌
かれはてむ後をば知らで夏草の 深くも人の思ほゆるかな
次の歌
思ふてふ言の葉のみやあきを経て 色も変はらぬものにはあるらむ