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君来ずは閨へも入らじ濃紫
我が元結に霜は置くとも

歌の意味
あなたが来ないなら寝室へも入るまい。濃い紫の私の元結に霜が置こうとも。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 693

詞書「題しらず」
 恋人が来ないうちは寝所にも入らず、髪を結う紐に霜が降りても外で待ち続けようという、ひたむきな待つ心を詠んだ歌である。濃紫の元結に白い霜が置くという色の対比が、夜更けの寒さと待つ人の姿を鮮やかに描いている。
 「待つ」の一連の歌で、次歌の第六百九十四首の「君をこそ待て」へと続き、待つ姿勢がより強く打ち出されている。

 初句「君来ずは」は、あなたが来ないならばの意の仮定条件である。
 二句「閨へも入らじ」は、寝室にも入るまいの意で、打消意志の「じ」で強い決意を表し、ここで句切れとなる。
 三句「濃紫」は、濃い紫色をいい、四句の「元結」の色を示す。
 四句「我が元結に」は、自分の髪を束ねる紐にの意で、外で待ち続ける姿を示す。
 結句「霜は置くとも」は、霜が置こうともの意で、逆接の仮定条件によって夜更けまで待つ覚悟を表し、二句と倒置の関係になっている。

ねや:寝室
もとゆひ:髪を束ねて結う紐
こむらさき:濃い紫色
作者
よみ人しらず
出典
古今和歌集
前の歌
月夜よし夜よしと人に告げやらば 来てふに似たり待たずしもあらず
次の歌
宮城野のもとあらの小萩露を重み 風を待つごと君をこそ待て