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大幣と名にこそ立てれ流れても
つひに寄る瀬はありてふものを

歌の意味
大幣だと評判が立ってはいるが、大幣が祓えの後に川に流されても最後には流れ寄る瀬があるように、私にもついに身を寄せる所があるというのに。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 707

詞書「返し」
 前歌への業平の返歌で、大幣と噂されてはいるが、流された大幣もついには寄る瀬があるように、自分にも最後に身を寄せる相手があり、それはあなただと答えている。相手の用いた大幣のたとえをそのまま受け、祓えの後に川に流す習わしへと転じて切り返した機知に富む歌である。
 伊勢物語の第四十七段にも同じ贈答が見え、多情と評された業平の人物像を伝える歌として知られる。
 作者の「なりひらの朝臣」は在原業平である。平城天皇の皇子阿保親王の五男で、母は桓武天皇の皇女伊都内親王である。右近衛権中将などを務め、六歌仙、三十六歌仙の一人に数えられ、伊勢物語の主人公に擬されている。

 初句「大幣と」は、前歌の初句「大幣の」を受け、自分が大幣だと言われていることを示す。
 二句「名にこそ立てれ」は、評判に立っているがの意で、係助詞「こそ」を存続の「り」の已然形「れ」で結び、逆接的に下へ続く。
 三句「流れても」は、祓えの後に大幣が川に流されることと、浮き名が流れることを重ねている。
 四句「つひに寄る瀬は」は、最後に流れ着く瀬はの意で、最後に身を寄せる相手をたとえ、「流れ」「瀬」は大幣の縁語である。
 結句「ありてふものを」は、あるというのにの意で、「てふ」は「といふ」のつづまった形、「ものを」は逆接的な詠嘆を表す。

おほぬさ:祓えに用いる大きな幣。祓えの後、川に流した
な:うわさ、評判
よるせ:流れ寄る浅瀬。身を寄せる所のたとえ
作者
在原業平
出典
古今和歌集
前の歌
大幣の引く手あまたになりぬれば 思へどえこそ頼まざりけれ
次の歌
須磨の海人の塩焼く煙風をいたみ 思はぬ方にたなびきにけり