いにしへになほ立ち返る心かな
恋しきことにもの忘れせで
- 歌の意味
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過ぎ去った昔に、やはり立ち返ってしまう私の心であることよ。恋しいことについては、少しも忘れることをしないで。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌四 734
詞書「題しらず」
昔の恋を忘れることができず、心がいつも過去へと立ち返ってしまうと詠んだ歌である。ほかのことは忘れても、恋しいことだけは忘れないという心の性質を、率直に表している。
二句「立ち返る」は本巻の第六百八十二首の「立ち返り」と同じ語で、巻の前半では逢瀬を繰り返し求める心であったものが、ここでは過去へと戻る心として詠まれている。前の二首の昔の恋を思う心に続く一首である。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。紀望行の子で、古今和歌集の撰者の一人として仮名序を執筆し、土佐守を務めたのちに「土佐日記」を著した。
初句「いにしへに」は、過ぎ去った昔にの意で、かつての恋の日々を示す。
二句「なほ立ち返る」は、やはり立ち戻るの意で、本巻の第六百八十二首の三句「立ち返り」と同じ語を用いている。
三句「心かな」は、心であることよの意で、詠嘆の「かな」で結び、ここで句切れとなる。
四句「恋しきことに」は、恋しいことについてはの意である。
結句「もの忘れせで」は、物事を忘れることをしないでの意で、「で」は打消の接続助詞であり、三句の理由を倒置して述べている。
いにしへ:過ぎ去った昔
たちかへる:もとへ戻る
ものわすれ:物事を忘れること
- 作者
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紀貫之
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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わたつみとあれにし床を今さらに 払はば袖や泡と浮きなむ
- 次の歌
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思ひ出でて恋しき時は初雁の なきて渡ると人知るらめや