思ひ出でて恋しき時は初雁の
なきて渡ると人知るらめや
- 歌の意味
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あなたを思い出して恋しい時には、初雁が鳴いて空を渡るように、私も泣きながらあなたの家のあたりを行き来していると、あなたは知っているだろうか。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌四 735
詞書「人を忍びにあひ知りて逢ひがたくありければ、その家のあたりをまかり歩きけるをりに、雁の鳴くを聞きてよみて遣はしける」
人目を忍んで知り合った女に逢いがたく、その家のあたりを歩いていた時に雁の鳴く声を聞いて詠み送った歌である。初雁が鳴いて空を渡るように、自分も泣きながら家の周りをさまよっていることを、相手は知っているだろうかと訴えている。
前の昔の恋を思う歌に続き、逢えない人を思って泣く心を、初雁の声という秋の景物に託している。
作者の「大伴くろぬし」は大伴黒主である。近江国滋賀郡の人とされ、六歌仙の一人に数えられる。
初句「思ひ出でて」は、あなたを思い出しての意である。
二句「恋しき時は」は、恋しい時にはの意である。
三句「初雁の」は、秋に初めて渡ってくる雁をいい、四句の「なきて渡る」を導く。
四句「なきて渡ると」の「なき」は、雁が「鳴き」と、自分が「泣き」を掛けた掛詞で、「渡る」には雁が空を渡ることと、家のあたりを行き来することを重ねている。
結句「人知るらめや」は、あの人は知っているだろうか、いや知らないだろうの意で、反語の「や」で結ぶ。
はつかり:秋に初めて北から渡ってくる雁
なく:雁が鳴く意と、人が泣く意を掛ける
わたる:空や所を行き来する
- 作者
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大伴黒主
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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いにしへになほ立ち返る心かな 恋しきことにもの忘れせで
- 次の歌
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頼めこし言の葉今は返してむ 我が身ふるれば置き所なし