今はとて返す言の葉拾ひ置きて
おのがものから形見とや見む
- 歌の意味
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今はもうこれまでと言って返してきた手紙の言葉を拾い置いて、もとは自分のものでありながら、あなたの形見として見ることになるのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌四 737
詞書「返し」
前歌への源能有の返歌で、別れのしるしに返された手紙を拾い集めて取っておき、もとは自分が書いたものでありながら、相手の形見として見ることになるのかと嘆いている。自分の言葉が相手の形見になるという皮肉な成り行きに、別れの哀しみがこめられている。
前歌の「言の葉」「返してむ」を「返す言の葉」と受け、「置き所なし」を「拾ひ置きて」と受けて、言葉を細やかに対応させている。「形見」の語は、巻末の第七百四十三首から第七百四十六首の「形見」の一連へとつながっていく。
作者の「近院の右のおほいまうちきみ」は源能有である。文徳天皇の皇子で、臣籍に降下して源姓を賜り、右大臣に至った。近院の右大臣と呼ばれる。
初句「今はとて」は、今はもうこれまでと言っての意で、別れを告げる言葉である。
二句「返す言の葉」は、あなたが返してきた手紙の言葉の意で、前歌の「言の葉」「返してむ」を受けている。
三句「拾ひ置きて」は、拾い集めて取っておいての意で、「言の葉」を木の葉に見立てた縁語であり、前歌の「置き所なし」に応じている。六音の字余りの句である。
四句「おのがものから」は、自分のものでありながらの意で、「ものから」は逆接の接続助詞である。
結句「形見とや見む」は、あなたの形見として見ることになるのだろうかの意で、係助詞「や」を推量の「む」の連体形で結ぶ。
かたみ:別れた人や亡き人をしのぶよすがとなるもの
ひろひおく:拾って取っておく
- 作者
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源能有
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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頼めこし言の葉今は返してむ 我が身ふるれば置き所なし
- 次の歌
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玉鉾の道はつねにもまどはなむ 人を訪ふとも我かと思はむ