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玉鉾の道はつねにもまどはなむ
人を訪ふとも我かと思はむ

歌の意味
あの人の通う道は、いつも迷ってほしいものだ。そうすれば、ほかの人を訪ねようとして迷い、私のもとに来たとしても、私を訪ねてくれたのかと思えるだろう。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 738

詞書「題しらず」
 通わなくなった男に対し、せめてあの人の通う道がいつも迷ってほしい、そうすればほかの女を訪ねる途中で迷って自分のもとに来ても、自分を訪ねてくれたと思えるだろうと詠んだ歌である。訪れの絶えた悲しみを、屈折した願いによって表している。
 前の二首の贈答に続き、同じ作者が相手の訪れを願う心を詠んでいる。次歌の第七百三十九首、第七百四十首と、訪れや別れをめぐる歌が続いていく。
 作者の「よるかの朝臣」は藤原因香である。贈太政大臣藤原高藤の娘で、母は尼敬信である。掌侍などを経て典侍を務めた。

 初句「玉鉾の」は、「道」にかかる枕詞である。
 二句「道はつねにも」は、あの人の通う道はいつもの意である。
 三句「まどはなむ」は、迷ってほしいの意で、「なむ」は他に対する願望の終助詞であり、ここで句切れとなる。
 四句「人を訪ふとも」は、ほかの人を訪ねるのであってもの意の逆接の仮定条件である。
 結句「我かと思はむ」は、私を訪ねてくれたのかと思おうの意で、意志の「む」で結ぶ。

たまほこ:道にかかる枕詞
まどふ:道に迷う
とふ:訪ねる
作者
藤原因香
出典
古今和歌集
前の歌
今はとて返す言の葉拾ひ置きて おのがものから形見とや見む
次の歌
待てと言はば寝ても行かなむしひて行く 駒の足折れ前の棚橋