古典和歌stream

大空は恋しき人の形見かは
もの思ふごとに眺めらるらむ

歌の意味
大空は恋しい人の形見なのだろうか、そうではないのに。どうして物思いをするたびに、つい眺めてしまうのだろう。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 743

詞書「題しらず」
 大空は恋しい人の形見でもないのに、物思いにふけるたびに自然と空を眺めてしまうと詠んだ歌である。恋しい人と同じ空の下にいるという思いが、空を見上げるしぐさにこめられ、後世にも愛誦された。
 本歌から巻末の第七百四十六首までは「形見」を詠む歌が続き、本歌はその一連の始まりとして、形見ならぬ大空を眺めてしまう心を詠んでいる。
 作者の「さかゐのひとさね」は酒井人真である。備前権大目などを経て、延喜十四年に従五位下、土佐守となった。

 初句「大空は」は、広々とした空はの意で、係助詞「は」で話題を示す。
 二句「恋しき人の」は、恋しく思う人のの意である。
 三句「形見かは」は、形見であろうか、いや形見ではないの意で、反語の「かは」を用い、ここで句切れとなる。
 四句「もの思ふごとに」は、物思いをするたびにの意である。
 結句「眺めらるらむ」は、つい眺めてしまうのだろうの意で、自発の「らる」に原因を推量する「らむ」が付いている。

かたみ:別れた人や亡き人をしのぶよすがとなるもの
ながむ:物思いにふけりながらぼんやりと見やる
作者
酒井人真
出典
古今和歌集
前の歌
山がつの垣ほに這へる青つづら 人はくれども言伝てもなし
次の歌
逢ふまでの形見も我は何せむに 見ても心の慰まなくに