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久方の天つ空にも住まなくに
人はよそにぞ思ふべらなる

歌の意味
遥かな天の空に住んでいるわけでもないのに、あの人は私をよそよそしく、遠い存在のように思っているらしい。
鑑賞
巻第十五 恋歌五 751

詞書「題しらず」
 天上に住んでいるわけでもないのに、相手が自分を遠く縁のない者のように扱うことを嘆く歌である。空の遠さを持ち出すことで、心の隔たりの大きさを際立たせている。
 作者の「もとかた」は在原元方である。在原棟梁の子で、在原業平の孫にあたる。大納言藤原国経の猶子となった。

 初句「久方の」は、「天」「空」などにかかる枕詞である。
 二句「天つ空にも」は、天上の空の意で、手の届かない遥かな場所を示す。「も」はさえの意を添える。
 三句「住まなくに」は、「なくに」が打消の「ず」の古いク語法で、住んでいないのにの意となる逆接である。
 四句「人はよそにぞ」は、「よそ」が無関係な所、疎遠な間柄をいい、空の遠さと対応する。係助詞「ぞ」を結句の連体形で結ぶ。
 結句「思ふべらなる」は、「べらなり」が推量の助動詞で、平安初期の漢文訓読調の語である。「べらなる」と連体形で「ぞ」を受ける。次歌も同じ「べらなり」で結ばれ、二首が語法を共有して並ぶ。

あまつそら:天の空、大空
よそ:かけ離れた所、無関係なこと
作者
在原元方
出典
古今和歌集
前の歌
我がごとく我を思はむ人もがな さてもや憂きと世を試みむ
次の歌
見てもまたまたも見まくのほしければ 馴るるを人はいとふべらなり