忘れ草種とらましを逢ふことの
いとかく難きものと知りせば
- 歌の意味
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忘れ草の種をとっておけばよかった。逢うことがこれほど難しいものだと知っていたならば。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 765
詞書「題しらず」
逢うことがこれほど難しいと知っていたら、恋を忘れさせる忘れ草の種を用意しておいたのにと悔やむ歌である。忘れ草という薬草めいた植物に頼ろうとする発想に、恋の苦しさから逃れたい切実さが表れている。次歌も忘れ草を詠み、二首が対をなしている。
初句「忘れ草」は、萱草のことで、身につけると憂いを忘れるとされた草である。次歌の三句にも同じ語が置かれている。
二句「種とらましを」は、反実仮想の「まし」を用い、種をとっておけばよかったのにの意となる。ここで句切れとなり、倒置によって下の句が理由を示す。
三句「逢ふことの」は、恋人と逢うことをいい、四句の「難き」の主語となる。
四句「いとかく難き」は、「いとかく」がこれほどまでにの意で、逢瀬の難しさを強調する。
結句「ものと知りせば」は、「せば」が過去の「き」の未然形に接続助詞「ば」が付いた形で、二句の「まし」と呼応する反実仮想の構文をなす。
わすれぐさ:萱草のことで、身につけると憂いを忘れるとされた草
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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山の井の浅き心も思はぬに 影ばかりのみ人の見ゆらむ
- 次の歌
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恋ふれども逢ふ夜のなきは忘れ草 夢路にさへや生ひ茂るらむ