恋ふれども逢ふ夜のなきは忘れ草
夢路にさへや生ひ茂るらむ
- 歌の意味
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これほど恋しく思っているのに逢える夜がないのは、忘れ草が夢の通い路にまで生い茂っているからだろうか。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 766
詞書「題しらず」
恋い慕っているのに夢の中でさえ逢えないのは、忘れ草が夢の通い路にまで茂って道をふさいでいるからかと想像する歌である。前歌では忘れ草を自ら求めたが、この歌では相手の側の忘却を示すものとして描かれ、二首で忘れる側と忘れられる側が反転している。
初句「恋ふれども」は、「ども」が逆接で、恋い慕っているけれどもの意となる。
二句「逢ふ夜のなきは」は、逢える夜がないことをいい、現実だけでなく夢でも逢えないことを含む。
三句「忘れ草」は、前歌の初句と同じ忘れ草で、ここでは相手が自分を忘れていることの象徴となる。
四句「夢路にさへや」は、夢の中で恋人のもとへ通う道をいい、「さへ」は現実の道に加えて夢路までもの意である。「や」は疑問で、結句で結ぶ。
結句「生ひ茂るらむ」は、「らむ」が原因推量で、忘れ草が生い茂っているのだろうかと推し量る。夢路をふさぐ草という幻想的な発想で一首を結ぶ。
わすれぐさ:萱草のことで、身につけると憂いを忘れるとされた草
ゆめぢ:夢の中で恋人のもとへ通う道
おひしげる:草木が生えて茂る
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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忘れ草種とらましを逢ふことの いとかく難きものと知りせば
- 次の歌
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夢にだに逢ふこと難くなりゆくは 我や寝を寝ぬ人や忘るる