月夜には来ぬ人待たるかき曇り
雨も降らなむわびつつも寝む
- 歌の意味
-
月の明るい夜には、来ない人でもつい待ってしまう。いっそ空が曇って雨でも降ってほしい。そうすれば嘆きながらでも寝てしまおう。
- 鑑賞
-
巻第十五 恋歌五 775
詞書「題しらず」
月の美しい夜には来ない人でもつい待ってしまうので、いっそ雨が降ってあきらめさせてほしいと願う歌である。雨ならば来ないのも当然と思えるという、待つ苦しさから逃れようとする心理を鋭くとらえている。
初句「月夜には」は、月の明るい夜にはの意で、月夜は恋人が訪れやすい夜とされた。
二句「来ぬ人待たる」は、「る」が自発の助動詞で、来ない人でも自然と待たれるの意となる。ここで句切れとなる。
三句「かき曇り」は、空が一面に曇ってで、「かき」は接頭語である。
四句「雨も降らなむ」は、「なむ」が他に対する願望の終助詞で、雨でも降ってほしいの意となる。
結句「わびつつも寝む」は、「わびつつも」が嘆きながらもの意、「寝む」は意志で、せめて寝てしまおうとする。待つことをやめる口実を雨に求める心情である。
かきくもる:空が一面に曇る
わぶ:嘆く、つらく思う
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
古今和歌集
- 前の歌
-
今は来じと思ふものから忘れつつ 待たるることのまだもやまぬか
- 次の歌
-
植ゑていにし秋田刈るまで見えこねば 今朝初雁の音にぞなきぬる