植ゑていにし秋田刈るまで見えこねば
今朝初雁の音にぞなきぬる
- 歌の意味
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苗を植えて去っていったあの人が、その秋の田を刈る時期になっても姿を見せないので、今朝は初雁が鳴くように、声をあげて泣いてしまった。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 776
詞書「題しらず」
春に田植えをして去った人が、稲刈りの秋になっても訪れないので、初雁の声に合わせるように泣いてしまったと詠む歌である。田植えから稲刈りまでという農事の時間で待った月日の長さを示し、秋の到来を告げる初雁に自分の泣き声を重ねている。
初句「植ゑていにし」は、「いに」が去る意の「往ぬ」で、苗を植えて去っていったの意となる。六音の字余りの句である。
二句「秋田刈るまで」は、植えた稲が実って刈り取る秋までの意で、待った期間の長さを示す。
三句「見えこねば」は、「見え来」は姿を見せにやって来る意で、「ねば」は打消の已然形に「ば」が付いた確定条件である。
四句「今朝初雁の」は、今朝初めて渡ってきた雁をいい、秋の深まりを告げる。「刈る」と「雁」の音が響き合う。
結句「音にぞなきぬる」は、「ね」が声、「なき」に雁が「鳴き」と自分が「泣き」を掛ける。係助詞「ぞ」を完了「ぬ」の連体形で結ぶ。
いぬ:去る、行ってしまう
はつかり:その秋初めて北から渡ってくる雁
なく:雁が「鳴く」意と、人が「泣く」意を掛ける
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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古今和歌集
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月夜には来ぬ人待たるかき曇り 雨も降らなむわびつつも寝む
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来ぬ人を待つ夕暮れの秋風は いかに吹けばかわびしかるらむ