唐衣なれば身にこそまつはれめ
かけてのみやは恋ひむと思ひし
- 歌の意味
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唐衣は着なれれば身にまとわりつくものだ。そのように馴れ親しめば身に添うものと思っていた。衣桁に掛けておくように、心にかけて恋い慕うだけで終わろうとは思いもしなかった。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 786
詞書「題しらず」
衣は着なれるほど身に添うものであるように、親しくなれば相手と一つになれると思っていたのに、心にかけて恋い慕うばかりになってしまったと嘆く歌である。衣に関する縁語を連ね、「なれ」「かけ」の掛詞によって、衣の姿と恋の成り行きを重ねている。
作者の「かけのりのおほきみ」は景式王である。上総太守惟条親王の子で、文徳天皇の孫にあたる。寛平九年(897)に二世王として従四位下に直叙された。
初句「唐衣」は、美しい衣の意で、衣にかかわる縁語を導く歌の中心となる。
二句「なれば身にこそ」は、「なれ」に衣が着なれて柔らかくなる意と、人に「馴れ」親しむ意を掛ける。係助詞「こそ」は三句の已然形で結ぶ。
三句「まつはれめ」は、「まつはる」がまといつく意で、「め」は推量の「む」の已然形で「こそ」を受ける。こそ〜已然形で逆接となり、身にまといつくだろうにの意となる。ここで句切れとなる。
四句「かけてのみやは」は、「かけ」に衣を衣桁に「掛け」る意と、心に「懸け」る意を掛ける。「やは」は反語で、ただ心にかけるだけで終わるとは思わなかったの意となる。
結句「恋ひむと思ひし」は、「し」が過去の助動詞「き」の連体形で、「やは」を受けて結ぶ。恋が成就しないまま終わりに向かう嘆きである。
からころも:美しい衣服、衣の美称
なる:衣が着なれて柔らかくなる意と、人に馴れ親しむ意を掛ける
まつはる:まといつく
かく:衣を衣桁に「掛く」意と、心に「懸く」意を掛ける
- 作者
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景式王
- 出典
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古今和歌集
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行き帰り空にのみして経ることは 我がゐる山の風はやみなり
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秋風は身を分けてしも吹かなくに 人の心の空になるらむ