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我のみや世をうぐひすとなきわびむ
人の心の花と散りなば

歌の意味
あの人の心の花が散ってしまったならば、私だけが、世の中をつらいと、花の散るのを惜しんで鳴く鶯のように、泣き嘆くことになるのだろうか。
鑑賞
巻第十五 恋歌五 798

詞書「題しらず」
 恋人の心の花が散ってしまったら、自分だけが花の散るのを嘆く鶯のように泣き暮らすことになるのかと詠む歌である。前歌の「人の心の花」を受け、その花が散った後の自分を、散る花を惜しんで鳴く鶯に重ねている。

 初句「我のみや」は、「や」が疑問の係助詞で、三句の連体形「む」で結ぶ。私だけがの意で、相手は平気であるのに自分だけが嘆くという孤独を示す。
 二句「世をうぐひすと」は、「うぐひす」に世を「憂く」思う意と、鳥の「鶯」を掛けた掛詞である。
 三句「なきわびむ」は、「なき」に鶯が「鳴き」と自分が「泣き」を掛け、「わぶ」は嘆く意である。ここで句切れとなる。
 四句「人の心の」は、前歌の四句と同じ語句で、恋人の心を花にたとえる表現を受け継ぐ。
 結句「花と散りなば」は、「なば」が完了の仮定で、散ってしまったならばの意となる。倒置によって最後に置かれ、初句からの嘆きの条件を示す。

うぐひす:世を「憂く」思う意と、鳥の「鶯」を掛ける
なきわぶ:鳥が鳴き悲しむ意と、人が泣き嘆く意を掛ける
作者
よみ人しらず
出典
古今和歌集
前の歌
色見えで移ろふものは世の中の 人の心の花にぞありける
次の歌
思ふともかれなむ人をいかがせむ 飽かず散りぬる花とこそ見め