初雁のなきこそ渡れ世の中の
人の心のあきし憂ければ
- 歌の意味
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初雁が鳴きながら空を渡っていくように、私も泣きながら日々を過ごしている。男女の仲における人の心の秋、つまり私への飽きがつらいので。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 804
詞書「題しらず」
初雁が鳴き渡るように、自分も泣きながら日を送っている、それは恋人の心に「秋」すなわち「飽き」が来たのがつらいからだと詠む歌である。秋の到来を告げる初雁と心の「あき」を結び、季節の景に心変わりの嘆きを重ねている。
作者の「きのつらゆき」は紀貫之である。紀望行の子で、古今和歌集の撰者の中心となり、仮名序を執筆した。土佐守などを歴任し、晩年には『土佐日記』を著した。三十六歌仙の一人である。
初句「初雁の」は、その秋初めて渡ってくる雁で、秋の到来を告げるものとして結句の「あき」を導く。本巻の第七百七十六首の四句にも詠まれている。
二句「なきこそ渡れ」は、「なき」に雁が「鳴き」と自分が「泣き」を掛け、「渡れ」は空を渡る意と日を送る意を重ねる。係助詞「こそ」を已然形「渡れ」で結び、ここで句切れとなる。
三句「世の中の」は、男女の仲をいう。本巻の第七百九十五首、第七百九十七首と同じ語句である。
四句「人の心の」は、恋人の心をいい、本巻の第七百九十七首、第七百九十八首の四句と同じ語句である。
結句「あきし憂ければ」は、「あき」に季節の「秋」と「飽き」を掛けた掛詞である。「し」は強意の副助詞、「憂ければ」は理由を示し、倒置によって二句の理由を後から述べる。
はつかり:その秋初めて北から渡ってくる雁
なく:雁が「鳴く」意と、人が「泣く」意を掛ける
わたる:空を渡る意と、日を送り続ける意
あき:季節の「秋」と、嫌気がさす意の「飽き」を掛ける
- 作者
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紀貫之
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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秋の田のいねてふこともかけなくに 何を憂しとか人のかるらむ
- 次の歌
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あはれとも憂しとも物を思ふ時 などか涙のいと流るらむ