人知れず絶えなましかばわびつつも
無き名ぞとだに言はましものを
- 歌の意味
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人に知られないうちに二人の仲が絶えてしまったのなら、嘆きながらも、根も葉もない噂だとだけでも言えただろうに。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 810
詞書「題しらず」
恋が世間に知られた後で終わってしまったので、根も葉もない噂だと言い逃れることすらできないと嘆く歌である。人に知られないうちに終わっていればせめて体面は保てたという、恋の終わりに伴う世間体の苦しさを詠んでいる。
作者の伊勢は、伊勢守藤原継蔭の娘で、宇多天皇の中宮温子に仕えた。宇多天皇の寵を受けて皇子を産み、のちに敦慶親王との間に中務を産んだ。三十六歌仙の一人で、古今和歌集の女性歌人として最も多くの歌が採られている。
初句「人知れず」は、人に知られないでの意で、恋が秘密のうちにあったならばという仮定の条件を示す。
二句「絶えなましかば」は、「ましかば」が反実仮想の条件で、結句の「まし」と呼応する。仲が絶えてしまったならばの意となる。
三句「わびつつも」は、嘆きながらもの意で、つらさの中でもせめてという気持ちを示す。
四句「無き名ぞとだに」は、「無き名」が根も葉もない噂の意で、「だに」はせめて〜だけでもの意である。
結句「言はましものを」は、「まし」が反実仮想、「ものを」は逆接の詠嘆で、言えただろうにと結ぶ。実際には知られてしまい言い逃れができないという嘆きがこもる。
なきな:根も葉もない噂、事実無根の評判
わぶ:嘆く、つらく思う
- 作者
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伊勢
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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つれなきを今は恋ひじと思へども 心弱くも落つる涙か
- 次の歌
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それをだに思ふこととて我が宿を 見きとな言ひそ人の聞かくに