荒小田を荒鋤き返し返しても
人の心を見てこそやまめ
- 歌の意味
-
荒れた田を荒く鋤き返し、さらに何度も鋤き返すように、繰り返し繰り返しても、あの人の本当の心を見届けてから、恋をやめよう。
- 鑑賞
-
巻第十五 恋歌五 817
詞書「題しらず」
荒れた田を何度も鋤き返すように、繰り返し相手の心を確かめ、その本心を見届けてからでなければあきらめないと詠む歌である。上二句の田を耕す景が「返し」を導く序詞となり、農作業の粘り強い反復に、あきらめきれない心を重ねている。
初句「荒小田を」は、荒れた小さな田の意で、「小」は接頭語である。
二句「荒鋤き返し」は、荒く鋤で土を掘り返す意で、初句とともに三句の「返し」を導く序詞となる。
三句「返しても」は、何度も繰り返しての意で、二句の「鋤き返し」を受けて「返し」を重ねる。
四句「人の心を」は、恋人の心をいい、その本心を確かめようとする対象を示す。
結句「見てこそやまめ」は、係助詞「こそ」を推量の「む」の已然形「め」で結び、見届けてからこそやめようという強い意志を示す。
あらをだ:荒れた田
すきかへす:鋤で土を掘り返す
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
古今和歌集
- 前の歌
-
わたつみの我が身越す波立ち返り 海人の住むてふうらみつるかな
- 次の歌
-
荒磯海の浜の真砂と頼めしは 忘るることの数にぞありける