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あき風にあふたのみこそ悲しけれ
我が身むなしくなりぬと思へば

歌の意味
秋風に吹かれる田の実のように、飽きの風にさらされる私の頼みこそ悲しい。稲の実が空になるように、わが身もむなしくなってしまったと思うと。
鑑賞
巻第十五 恋歌五 822

詞書「題しらず」
 秋風に吹かれて実が落ち空になった稲穂に、恋人に飽きられて頼みを失った自分の身を重ねた歌である。「秋」と「飽き」、「田の実」と「頼み」の掛詞を重ね、実りの季節であるはずの秋の田の景に、むなしくなった恋と身の嘆きを描いている。前歌に続いて秋風に飽きを重ねる歌が並ぶ。
 作者の「小町」は、小野氏の出で本名を伝えない女流歌人、小野小町である。出羽郡司小野良真の娘とする説などがあるが、系譜は明らかでない。仁明天皇、文徳天皇の頃の宮廷に仕えたとされ、六歌仙、三十六歌仙の一人である。

 初句「あき風に」は、「あき」に季節の「秋」と「飽き」を掛けた掛詞で、前歌の初句と同じ語で始まる。
 二句「あふたのみこそ」は、「たのみ」に「田の実」すなわち稲の実と、「頼み」を掛けた掛詞である。係助詞「こそ」は三句の已然形で結ぶ。
 三句「悲しけれ」は、「悲しけれ」が形容詞の已然形で「こそ」を受ける。ここで句切れとなる。
 四句「我が身むなしく」は、稲の実が空になる意と、わが身が空しくなる意を重ねる。
 結句「なりぬと思へば」は、「ぬ」が完了、「思へば」は理由を示し、倒置によって悲しい理由を後から述べる。

あき:季節の「秋」と、嫌気がさす意の「飽き」を掛ける
たのみ:稲の実の「田の実」と、「頼み」を掛ける
作者
小野小町
出典
古今和歌集
前の歌
あき風の吹きと吹きぬる武蔵野は なべて草葉の色変はりけり
次の歌
秋風の吹き裏返す葛の葉の うらみてもなほ恨めしきかな