秋風の吹き裏返す葛の葉の
うらみてもなほ恨めしきかな
- 歌の意味
-
秋風が吹いて葛の葉の裏を返して見せるように、いくら恨んでも、なおあの人が恨めしいことだ。
- 鑑賞
-
巻第十五 恋歌五 823
詞書「題しらず」
秋風に吹かれて白い葉裏を見せる葛の葉の景から「裏見」を導き、どれほど恨んでもなお恨めしいと詠む歌である。上三句が序詞となり、「うら」の音を重ねて、繰り返し翻る葛の葉に尽きない恨みを重ねている。後世、葛の葉の裏見は恨みの代表的な表現となった。
作者の「平貞文」は、桓武平氏の平好風の子で、左兵衛佐に至った平貞文である。平中とも呼ばれ、『平中物語』の主人公として恋の逸話で知られる。
初句「秋風の」は、秋に吹く風で、秋に飽きを響かせる。前歌、前々歌の「あき風」に続く。
二句「吹き裏返す」は、風が葉を吹いて裏返す意で、葛の葉の白い裏を見せるさまをいう。
三句「葛の葉の」は、葉の裏が白く目立つ葛の葉で、初句からここまでが四句の「うらみ」を導く序詞となる。
四句「うらみてもなほ」は、「うらみ」に葉の裏を見る意の「裏見」と「恨み」を掛けた掛詞である。「ても」は逆接の仮定、「なほ」はそれでもやはりの意である。
結句「恨めしきかな」は、「恨めし」の連体形に詠嘆の「かな」が付いた形で、恨めしいことだと結ぶ。四句の「うらみ」と同音を重ねている。
くず:秋の七草の一つで、葉の裏が白いつる草
うらみる:葉の「裏見る」意と、「恨みる」を掛ける
- 作者
-
平貞文
- 出典
-
古今和歌集
- 前の歌
-
あき風にあふたのみこそ悲しけれ 我が身むなしくなりぬと思へば
- 次の歌
-
あきといへばよそにぞ聞きしあだ人の 我をふるせる名にこそありけれ