血の涙落ちてぞたぎつ白河は
君が世までの名にこそありけれ
- 歌の意味
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血の涙が落ちて激しく流れている。白河という名は、あなたが生きておられた世までの名であったのだなあ。
- 鑑賞
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巻第十六 哀傷歌 830
詞書「前太政大臣を白河のあたりに送りける夜よめる」
前太政大臣の亡骸を白河のあたりへ送った夜に詠んだ歌である。悲しみのあまり流す血の涙で白河は赤く染まり、「白」という名はもはやふさわしくないと嘆いている。地名の「白」と血の赤の対比によって、悲嘆の深さを鮮やかに示した歌である。
前太政大臣は藤原良房を指すとされる。良房は人臣で初めて摂政となった人物で、白河に別業を営み、白河殿とも呼ばれた。葬送の地である白河に、良房その人の呼び名が重なっている。
作者の「そせい法し」は素性である。僧正遍昭の子で、出家して雲林院などに住んだ歌人である。三十六歌仙の一人に数えられる。
初句「血の涙」は、悲しみが極まったときに流すとされる紅の涙である。
二句「落ちてぞたぎつ」の「たぎつ」は水が激しく流れる意で、係助詞「ぞ」を受けて連体形で結ぶ。涙が川となってほとばしる誇張の表現で、二句切れである。
三句「白河は」は葬送の地の名である。地名にある「白」の字義を生かし、血の涙の赤と対比させている。
四句「君が世までの」は、あなたの生きていた世までの、の意である。白河の名が良房の存命中に限られていたとする。
結句「名にこそありけれ」は、係助詞「こそ」を受けて已然形「けれ」で結ぶ。「けり」は今初めて気づいた詠嘆を表し、白河の名が今は実を失ったことを嘆く。
おほきおほいまうちぎみ:太政大臣
たぎつ:水が激しく流れる、わき立つ
- 作者
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素性
- 出典
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泣く涙雨と降らなむ渡り川 水まさりなば帰りくるがに
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