夢とこそ言ふべかりけれ世の中に
うつつあるものと思ひけるかな
- 歌の意味
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この世は夢と言うべきであったのだ。世の中に現実というものがあると思っていたことよ。
- 鑑賞
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巻第十六 哀傷歌 834
詞書「あひ知れりける人の身まかりにければよめる」
親しくしていた人が亡くなったときに詠んだ歌である。人の死に接して、この世は夢と呼ぶべきものであったと悟り、世に確かな現実があると思っていた自分を顧みている。前歌の、この世こそ夢であったという発想を受け継いでいる。
作者の「紀つらゆき」は紀貫之である。古今集の撰者の中心人物で、仮名序を執筆した。『土佐日記』の作者としても知られ、三十六歌仙の一人である。
初句「夢とこそ」は、この世を夢と呼ぶことを係助詞「こそ」で強調する。
二句「言ふべかりけれ」は、係助詞「こそ」を受けて已然形「けれ」で結ぶ。「べかり」は当然、「けり」は今気づいた詠嘆を表す。二句切れである。
三句「世の中に」は、人の生きるこの世を指す。
四句「うつつあるものと」の「うつつ」は、夢に対する現実である。前歌の「夢」と、この句の「うつつ」が対になる。
結句「思ひけるかな」は、これまでそう思っていたことへの詠嘆である。自らの認識の浅さを悔いる気持ちがこもる。
あひしる:互いに知り合う、親しく交際する
うつつ:現実、目が覚めている状態
- 作者
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紀貫之
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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寝ても見ゆ寝でも見えけり大方は 空蝉の世ぞ夢にはありける
- 次の歌
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寝るがうちに見るをのみやは夢と言はむ はかなき世をもうつつとは見ず