瀬をせけば淵となりても淀みけり
別れを止むるしがらみぞなき
- 歌の意味
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浅瀬をせき止めれば、淵となってでも水は淀むものだった。しかし、死の別れを止めるしがらみはないのだ。
- 鑑賞
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巻第十六 哀傷歌 836
詞書「姉の身まかりにける時によめる」
姉が亡くなったときに詠んだ歌である。川の流れはせき止めれば淵となって淀むが、死による別れを止めるしがらみはどこにもない。流れる水の比喩によって、どうしても引き止めることのできない死別の悲しみを表している。
本巻冒頭の第八百二十九首も妹の死を悼み、川の水によって死者を引き戻そうと願う歌であり、同じく肉親の死を川の比喩で詠む歌として対応している。
作者の「みふのたたみね」は壬生忠岑である。古今集の撰者の一人で、三十六歌仙の一人である。
初句「瀬をせけば」は、浅瀬をせき止めれば、の意である。「瀬」と「せけ」の音が重なり、調子を整えている。
二句「淵となりても」は、流れが止められて深い淵になっても、の意である。
三句「淀みけり」は、水は淀むものだった、と気づきを表す。「けり」で言い切る三句切れである。「瀬」「淵」「淀む」は川にかかわる縁語である。
四句「別れを止むる」は、死による別れを引き止める、の意である。
結句「しがらみぞなき」の「しがらみ」は、川の流れをせき止めるために杭を打ち並べて木や竹を絡めたものである。係助詞「ぞ」を受けて連体形「なき」で結ぶ。
せく:せき止める
しがらみ:川の流れをせき止めるため、杭を打ち並べて竹や木の枝を絡めたもの
- 作者
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壬生忠岑
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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寝るがうちに見るをのみやは夢と言はむ はかなき世をもうつつとは見ず
- 次の歌
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先立たぬ悔いの八千度悲しきは 流るる水の帰り来ぬなり