君まさで煙絶えにし塩竈の
うらさびしくも見え渡るかな
- 歌の意味
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あなたがいらっしゃらなくなって、塩を焼く煙も絶えてしまった塩竈の浦は、見渡す限り心寂しく見えることだ。
- 鑑賞
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巻第十六 哀傷歌 852
詞書「河原の左大臣の身まかりての後、かの家にまかりてありけるに、塩竈といふ所のさまを作れりけるを見てよめる」
河原の左大臣が亡くなった後、その邸宅を訪れ、庭に陸奥の塩竈の浦の景色を模して造られた所を見て詠んだ歌である。主が生きていたころは塩焼きの煙が立てられていたが、今はそれも絶え、浦の景色はもの寂しく見えると詠む。風流を尽くした邸宅の変わりように、主を失った悲しみを重ねている。
河原の左大臣は源融である。六条河原の河原院の庭に陸奥の塩竈の浦を模し、難波から海水を運ばせて塩を焼かせたと伝えられる。本巻の第八百四十八首も源融の死を悼む歌で、同じ人物の死をめぐる歌が並んでいる。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。古今集の撰者の中心人物で、仮名序を執筆した。三十六歌仙の一人である。
初句「君まさで」の「まさ」は「あり」の尊敬語「ます」で、「で」は打消の接続助詞である。あなたがいらっしゃらなくなって、の意である。
二句「煙絶えにし」は、塩焼きの煙が絶えてしまった、の意である。
三句「塩竈の」は陸奥の歌枕で、ここでは河原院の庭に模された塩竈を指す。
四句「うらさびしくも」の「うら」は、塩竈の「浦」と、心の意の「うら」を掛ける掛詞である。
結句「見え渡るかな」は、見渡す限り一面に見えることだ、と詠嘆して結ぶ。
ます:「あり」の尊敬語。いらっしゃる
しほがま:陸奥の歌枕。塩を焼く釜のある浦
うら:塩竈の「浦」と、心の意の「うら」を掛ける
- 作者
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紀貫之
- 出典
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古今和歌集
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色も香も昔の濃さに匂へども 植ゑけむ人の影ぞ恋しき
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君が植ゑしひとむら薄虫の音の しげき野辺ともなりにけるかな