誰見よと花咲けるらむ白雲の
立つ野と早くなりにしものを
- 歌の意味
-
誰に見よというので花は咲いているのだろう。ここはもう早くから白雲の立つ野となってしまったのに。
- 鑑賞
-
巻第十六 哀傷歌 856
詞書は前の歌に続き「題しらず」
花を見せたい人がもういないのに、誰に見せようとして咲いているのかと花に問いかける歌である。故人を葬った野は、火葬の煙が白雲となって立つ野になってしまったと嘆いている。美しく咲く花と、人のいなくなった野との対比が悲しみを深めている。
作者は不明である。
初句「誰見よと」は、誰に見よというので、の意である。
二句「花咲けるらむ」の「らむ」は現在推量で、咲いているのだろう、と疑問を投げかける。二句切れである。
三句「白雲の」は、火葬の煙が白雲となって立ちのぼる様子を思わせる。本巻の第八百三十一首が葬送の煙を願ったのに対し、この歌では煙が白雲となった後の野を詠む。
四句「立つ野と早く」は、白雲の立つ野に早くも、の意である。
結句「なりにしものを」の「ものを」は逆接の詠嘆で、なってしまったのに、と余情を残して結ぶ。
しらくも:白い雲。ここでは火葬の煙を思わせる
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
古今和歌集
- 前の歌
-
亡き人の宿に通はば郭公 かけて音にのみ泣くと告げなむ
- 次の歌
-
数々に我を忘れぬものならば 山の霞をあはれとは見よ