声をだに聞かで別るる魂よりも
亡き床に寝む君ぞ悲しき
- 歌の意味
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あなたの声さえ聞かずにこの世を去っていく私の魂よりも、私のいなくなった床にひとり寝るであろうあなたのほうが悲しく思われる。
- 鑑賞
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巻第十六 哀傷歌 858
詞書「男の人の国にまかれりける間に、女にはかに病をしていと弱くなりにける時、よみおきて身まかりにける」
夫が地方の国へ下っている間に、急に病が重くなった妻が、詠み残して亡くなった歌である。夫の声さえ聞けずに死んでいく自分よりも、自分のいなくなった床にひとりで寝ることになる夫のほうが悲しいと詠む。死を前にして、残される夫を思いやる心が込められている。
作者は不明である。詞書から、夫の留守中に亡くなった女性の歌であることがわかる。
初句「声をだに」の「だに」は、せめて声だけでも、の意で、最小限のものを挙げる。
二句「聞かで別るる」の「で」は打消の接続助詞で、聞かずに別れていく、の意である。
三句「魂よりも」は、この世を去っていく自分の魂よりも、の意である。
四句「亡き床に寝む」は、私が亡くなった後の床に寝るであろう、の意である。「む」は推量である。
結句「君ぞ悲しき」は、係助詞「ぞ」を受けて連体形「悲しき」で結ぶ。
たま:魂
とこ:寝床
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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数々に我を忘れぬものならば 山の霞をあはれとは見よ
- 次の歌
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もみぢ葉を風にまかせて見るよりも はかなきものは命なりけり