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露をなどあだなるものと思ひけむ
我が身も草に置かぬばかりを

歌の意味
どうして露をはかないものと思っていたのだろう。我が身も、草の上に置いていないというだけで、露と変わらないのに。
鑑賞
巻第十六 哀傷歌 860

詞書「身まかりなむとてよめる」
 死を前にして詠んだ歌である。これまで露をはかないものと思ってきたが、自分の身もまた、草の上に置いていないだけで、露と同じようにはかないものだと悟る。自らの命を露にたとえ、死を目前にした心境を静かに詠んでいる。
 前歌が紅葉を命のたとえとしたのに対し、この歌は露を我が身のたとえとしており、ともにはかない自然の景物に自らの命を重ねている。
 作者の「藤原これもと」は藤原惟幹である。伝は詳らかでなく、古今集にはこの一首のみが入る。

 初句「露をなど」の「など」は、どうして、の意の疑問の副詞で、自らへの問いかけとなる。
 二句「あだなるものと」の「あだ」は、はかない、もろい、の意である。
 三句「思ひけむ」は、初句の「など」を受けて、思っていたのだろう、と過去の推量で結ぶ。三句切れである。
 四句「我が身も草に」は、自分の身も草の上に、の意である。
 結句「置かぬばかりを」は、置いていないだけのことなのに、の意である。「置く」は露にかかわる語で、我が身を露にたとえている。

みまかる:死ぬ
あだ:はかないこと、もろいこと
作者
藤原惟幹
出典
古今和歌集
前の歌
もみぢ葉を風にまかせて見るよりも はかなきものは命なりけり
次の歌
つひに行く道とはかねて聞きしかど 昨日今日とは思はざりしを