うれしきを何に包まむ唐衣
たもとゆたかに裁てと言はましを
- 歌の意味
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このうれしさを何に包もうか。唐衣の袂をゆったりと仕立てよと言っておけばよかったのに。
- 鑑賞
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巻第十七 雑歌上 865
詞書「題しらず」
あふれるほどの喜びを包みきれないことを、衣の袂を広く仕立てておけばよかったと悔やむ形で表した歌である。喜びを形あるもののように扱う発想がほほえましく、祝いの場の歌として広く知られる。作者は未詳である。
前歌の第八百六十四首が集いの楽しさを詠んだのを受け、本歌は喜びそのものを主題とする。のちに喜びを袖に包むという表現は、祝意を述べる言い回しとして長く用いられた。
初句「うれしきを」は、形容詞の連体形を名詞のように用いて「うれしいことを」の意とし、喜びを包むべき物のように扱う。
二句「何に包まむ」は、推量の助動詞「む」による自問で、喜びの大きさを強調する。ここで意味が切れる二句切れである。
三句「唐衣」は美しい舶来風の衣である。前歌の「唐錦」と対をなし、布を詠む二首が並ぶ。
四句「たもとゆたかに」は袂をゆったりと広くの意で、喜びを包むだけの大きな袂を想像している。
結句「裁てと言はましを」は、反実仮想の助動詞「まし」に接続助詞「を」が付き、「仕立てよと言っておけばよかったのに」という悔やみを表す。
からころも:唐風の美しい衣
たもと:袖の垂れ下がった部分
たつ:布を切って衣を仕立てる
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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思ふどちまとゐせる夜は唐錦 たたまく惜しき物にぞありける
- 次の歌
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限りなき君がためにと折る花は 時しも分かぬ物にぞありける