紫の色濃き時はめもはるに
野なる草木ぞ分かれざりける
- 歌の意味
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紫草の色が濃い時は、目もはるかに見渡すかぎり、芽もふくらむ野の草木の区別がつかず、どれもいとしく思われることだ。
- 鑑賞
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巻第十七 雑歌上 868
詞書「妻のおとうとを持て侍りける人に袍を贈るとて詠みてやりける」
妻の妹を妻としている人、つまり義理の兄弟に袍を贈る際に添えた歌である。紫の色が濃いと野の草木の見分けがつかないように、妻への思いが深いので、その縁につながるあなたも分け隔てなく親しく思うという心を詠む。
作者の「なりひらの朝臣」は在原業平である。平城天皇の皇子阿保親王の子で、六歌仙、三十六歌仙の一人である。
この歌は『伊勢物語』第四十一段にも見え、前歌の「紫のゆかり」の心を受けて詠まれたものである。
初句「紫の」は前歌の第八百六十七首と同じ初句で、紫草のゆかりの発想を引き継ぐ。
二句「色濃き時は」は、紫の色が濃いことに妻への愛情の深さを重ねる。袍の色に掛けた言い方でもある。
三句「めもはるに」は、見渡すかぎり遠くまでの意の「目も遥に」と、草木の「芽も張る」を掛けた掛詞である。
四句「野なる草木ぞ」は、野にあるすべての草木を指し、妻の縁者を喩える。係助詞「ぞ」が結句にかかる。
結句「分かれざりける」は「ぞ」を受けて「ける」で結ぶ係り結びで、区別がつかないことだの意となる。
めもはる:目も遥かにの意と、芽も張るの意を掛ける
うへのきぬ:束帯の上着、袍
おとうと:年下のきょうだい、ここでは妻の妹
- 作者
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在原業平
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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紫の一本ゆゑに武蔵野の 草はみながらあはれとぞ見る
- 次の歌
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色なしと人や見るらむ昔より 深き心に染めてしものを