色なしと人や見るらむ昔より
深き心に染めてしものを
- 歌の意味
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色がないと人は見るだろうか。昔から深い心で染めていたものなのに。
- 鑑賞
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巻第十七 雑歌上 869
詞書「大納言藤原国経朝臣の宰相より中納言になりける時、染めぬ袍綾を贈るとて詠める」
藤原国経が参議から中納言に昇進した際、染めていない袍の綾織物を贈り、それに添えた歌である。色のない布を贈るが、昔から深い心で染めてきたのだと、長年の厚い思いと祝意を伝えている。
作者の「近院右のおほいまうちきみ」は源能有である。文徳天皇の皇子で源の姓を賜り臣籍に下り、右大臣に至った。邸宅の名から近院右大臣と呼ばれた。
国経は藤原長良の子で、基経の兄にあたる。前の二首が紫の色を詠んだのに続き、本歌は「色なし」と色のない布を詠んで、色をめぐる歌が三首並ぶ。
初句「色なしと」は、染めていない布であることと、情のないことを重ねた言い方である。前歌の「色濃き」と対照をなす。
二句「人や見るらむ」は、係助詞「や」を受けて現在推量の「らむ」で結ぶ係り結びで、ここで意味が切れる二句切れである。
三句「昔より」は、国経との長年の交わりを示す。
四句「深き心に」は、色の深さと心の深さを重ね、目に見えない心の色を示す。
結句「染めてしものを」は、完了の「つ」と過去の「き」に逆接の「ものを」が付き、「染めていたのに」と述べる。「染め」は「色」の縁語である。
あや:模様を織り出した絹織物、綾
うへのきぬ:束帯の上着、袍
さいしやう:参議の唐名、宰相
- 作者
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源能有
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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紫の色濃き時はめもはるに 野なる草木ぞ分かれざりける
- 次の歌
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日の光やぶし分かねば石上 ふりにし里に花も咲きけり